ALAN PARSONS PROJECT



(注・プラチナ、ゴールド・ディスク等のデータは98年当時の日米の資料によるものです。)

APPはエンジニア・プロデューサーとして有名なAlan Parsons と 当時作詞家だったEric Woolfson のコンビで、
曲毎に異なるヴォーカリストを選んで起用するという特殊な形式を採っていた。CDは何度か再発されているが、
ここでは取りあえず、私の持っているものの番号を載せてある。中でも音が良いとして世界中のファンに認められて
いるのが、日本盤のBVCAで始まる番号のシリーズ(発売当時各2000円、廃盤)である。高いものではないので、
もし中古でも見かけたら捕獲をお勧めする。



Tales Of Mystery And Imagination
Edgar Allan Poe
Polygram 832 820-2(US)
1987(1976)

邦題は「怪奇と幻想の物語」。エドガー・アラン・ポーの作品世界を
音楽で表現したもので、アラン・パーソンズ・プロジェクトのデビュー作
である。趣味的色彩の濃い作品であり、商業的成功を狙ったものでは
ないと長く世間では思われていたが、近年パーソンズが、「ポーを題材
にすればある程度は売れると思ったから、選んだ」 と発言していたので
驚いた記憶がある。パイロットのメンバーは4人とも参加している。ナレー
ターとしてOrson Welles、リード・ヴォーカリストとして Leonard Whiting、
Arthur Brown、 Terry Sylvester、 John Miles が参加している。なお、
87年のCD化に際してパーソンズは大幅に手を入れ、ギターのパートは
大分後から音が追加されている。特にポーを好きではなくても十分に
楽しめるアルバムだ。豪華ブックレット付き。

英56位、米38位、シングルは3枚カットされている。
(The System Of ) Doctor Tarr And Professor Fether (米37位)
The Raven (米80位)
To One In Paradise (米108位)

I Robot
BVCA -1004 (JP)
1985(1977)


邦題は「アイ・ロボット」。彼にインスピレイションを与えたアイザック・
アシモフの余りにも有名な同名作品の邦題は確か 「私はロボット」 である。
アリスタ移籍第一弾であり、以後APP名義の作品は全てアリスタから出る
ことになる。ヴォーカリストはAllan Clarke、 Steve Harley、 Jack Harris、
Peter Straker、 Jaki Whitren、 Dave Townsend、 Lenny Zakatek。ここ
からビリーの名は消え、代わりに Duncan Mackay が加わっている。ビリー
だけがAPPのアルバムから抜けた理由は、パーソンズが語るところに
よれば、「エリック・ウルフソンがキーボードを弾けるので、ビリーに頼む
必要が無くなった」 からだという。

私は未見だが、I Wouldn't Wanna Be Like You にはビデオがあるらしい。
(01.01.08追記)。

英30位、米9位でダブル・プラチナ・ディスク獲得。シングルは2枚出ている。
I Wouldn't Wanna Be Like You (米36位)
Don't Let It Show (米92位)

Pyramid
Arista A25D-13(JP)
1988(1978)

邦題は「ピラミッド」(当たり前か)。その名の通り、ピラミッドをモチーフ
にしたアルバムである。このアルバムからトッシュ君の代わりに Stuart
Elliott が入り、今日に至る。ヴォーカリストはColin Blunstone、 Dean
Ford、 Lenny Zakatek、 Jack Harris そして我らが David Patonである。
シングル曲の What Goes Upで、彼は歌っている。個人的にはそれと
One More River (ヴォーカルはレニー・ザカテク)、 The Eagle Will
Rise Again (同じくコリン・ブランストーン)が気に入っている。Colin
Blunstone が歌うと、どんな曲でもワン・ランク格が上に聴こえるのは私
だけだろうか?

英49位、米26位でプラチナ・ディスク獲得。シングルは意外にも1枚だけ。
What Goes Up (米87位)

EVE
Arista ARCD 8062(US)
(1979)

邦題は「イヴの肖像」。APPのアルバム・ジャケットは殆どヒプノシスが
手がけている。一見美しい女性たち(表ジャケに二人、裏ジャケにも一人)
だが、ベールの下をよく見ると、醜い痣や疣が……という、いかにもな仕掛け
なのだ。ヴォーカリストは Dave Townsend、 Chris Rainbow、 Lenny Zakatek、
Clare Torry、 Lesely Duncan、そして I'd Rather Be A Man という曲では
David Paton がリードをとっており、久々にデイヴィッドの張りのある高音が
聴ける。初参加のクリス・レインボウをパーソンズに紹介したのは、デイヴィッ
ドとイアンの二人である。パイロットの最末期に、遂に発表されずに終わって
しまった数枚のシングルにクリスが参加したのが知り合うきっかけだったとか。
捨て曲の無いアルバムだが、個人的には Don't Hold Back (ヴォーカルは
クレア・トリー)が特に好きだ。

英74位、米13位でゴールド・ディスク獲得。シングルは2枚出ている。
Damned If I Do (米27位)
You Won't Be There (米105位)

The Turn Of A Friendly Card
Arista ARCD 8226(US)
(1980)

邦題は「運命の切り札」。これだけ、ジャケットのコンセプトが Godley&Creme
(ex.10cc)である。ヴォーカリストは Elmer Gantry(1曲)、 Lenny Zakatek(2曲)、
Chris Rainbow(3曲)、 Eric Woolfson(2曲) である。特に声質の似たザカテク
とレインボウを繰り返し起用することによって、アルバム全体がトータルなイメージ
を保っている。

なお余談ながら、レニー・ザカテクは現在歌うことをやめてしまって、なんと日本人
アーティストの布袋寅泰のマネージャーをしている。もったいない!私はレニー
の歌が好きで、彼のソロ・アルバムも2枚とも持っている。何とかまた歌って欲しい
ものだ。布袋の King & Queen というアルバムではレニーと、レニーとのつながり
でクリス・レインボウもコーラスに参加している。

英38位、米13位でプラチナ・ディスク獲得。シングルは3枚出ている。
Games People Play (米16位)
Time (米15位)
Snake Eyes (米67位)

Eye In The Sky
Arista BVCA-1008(JP)
1993(1982)

邦題はそのまま 「アイ・イン・ザ・スカイ」。以後は邦題もすべて英語を片
仮名になおしただけになる。デザイン的には最も優れているように思う。一度
見たら忘れない印象的な絵だ。後年述懐したところによると、パーソンズ
自身はそれほど気に入ってはいないというが、コマーシャルなものを、と意識
して作られたこのアルバムは、売り上げから言えば最も成功した。タイトル曲
の Eye In The Sky はアメリカでトップ3に入る大ヒットとなった。ヴォーカリスト
はEric Woolfson、 Chris Rainbow、Lenny Zakatek、 Elmer Gantry、 Colin
Blunstone、そして我らが David Paton というおなじみの(だが最強の)布陣
である。中でも、Old And Wise はAPPの名曲中の名曲の一つとして、また
コリン・ブランストーンの数ある名唱の中でも特に優れたものとして、語り継が
れている。コリン自身、この曲と自分の声との相性の良さに気づいており、
自身のソロ・アルバムで少なくとも2回採り上げているほどだ。だから、都合
3種類の Old And Wise がコリンの歌で世に出ていることになる。珍しい例
ではないだろうか。

英27位、米7位でプラチナ・ディスク獲得、シングルは3枚出ている。
Eye In The Sky (米3位)
Psychobabble (米57位)
Old And Wise (米74位)

Ammonia Avenue
Arista A25D-6(JP)
1988(1984)

邦題は「アンモニア・アヴェニュー」。アンモニア臭の漂う路、という意味だ。
ジャケットには実際にどこかの大企業(General Electric社だったと思う)の
プラントを撮影したという。ヴォーカリストはお馴染みの Eric Woolfson、
Chris Rainbow、Lenny Zakatek、Colin Blunstone という顔ぶれである。
特にSince The Last Goodbye でのクリス・レインボウの名唱は語りぐさに
なっている。前作との間が2年空いているが、その間には初のベスト盤
You Don't Believe (1983、ゴールド・ディスク獲得)が発表されている。

時代はMTV全盛期を迎え、APPもこの頃からプロモ・ビデオを作成している。
当時としては画期的で斬新なアイディアと手法に満ちたものばかりで、私などは
今見てもその度に感心してしまうくらいだ。Don't Answer Me は「ホット・ロック・
ビデオ」 なる編集版で一時期出回ったので、ご覧になった方もあるかもしれない。
アメリカン・コミック風の絵によるハード・ボイルド・ストーリー仕立てで、ワン・
シーンだけバンドの絵が出るのだが、パーソンズとウルフソン以外は全く似て
おらず(というより別人)、しかも人数まで違うというものだった。Prime Time では
夜のマネキン人形たちの世界が描かれていた。

英24位、米15位でゴールド・ディスク獲得、シングルは2枚出ている。

Don't Answer Me (英58位、米15位)
Prime Time (米34位)

Vulture Cluture
Arista 25D-7(JP)
1988(1984)

邦題は「ヴァルチャー・カルチャー」。弱肉強食の意だという。「アイ・イン・
ザ・スカイ」 に匹敵する強烈な印象を与えるジャケットだ。ヴォーカリスト陣は
ここまで来ると既に固定した感もある Eric Woolfson、 Chris Rainbow、Lenny
Zakatek、Colin Blunstone そして我らが David Paton。デイヴィッドはシングル
Let's Talk About Me で堂々リード・ヴォーカルをとっている。

Let's Talk About Me にはプロモ・ビデオもある。テレビに夢中のカウチ・ポテト
亭主の気を惹こうと、女房殿は必死であの手この手と試してみるが、亭主は全く
気づきもしない。それどころか、彼女を押しのけてますますテレビにのめり込む
始末。遂に堪忍袋の緒が切れた女房殿は家出するが、それにすら気づかない。
やがて彼の見ているテレビに映ったのは、確かにどこかで見たことのある女……。
Days Are Numbers にもビデオはあるかもしれないが、未見である。

英24位、米46位。シングルは2枚出ている。
Let's Talk About Me (米56位)
Days Are Numbers (米71位)

Stereotomy
Arista BVCA-1012(JP)
1985


邦題は「ステレオトミー」。耳慣れない言葉だが、ポーの小説 「モルグ街の
殺人」 に出てくる言葉で、「截石法(せっせきほう)」という道路の舗装方の
一種だという。ヴォーカリストは John Miles、 Chris Rainbow、 Gary Brooker、
Graham Dyeで、中でも 「怪奇と幻想の物語」 以来9年ぶりにAPPへの復活
を果たした John Miles は、3曲を歌い活躍している。個人的にはGraham Dye
の参加が嬉しい。とても資料の少ない、いや無いに等しい人なので、何か
ご存知の方がおられたら是非教えて頂きたい。Scarlet Party というグループに
いたことしか分からないのだ。

なお、これがデイヴィッドの最後の参加作品である。

Stereotomy のプロモ・ビデオは、当時最先端の技術を用いた斬新なもの
だったので、ご記憶の方もあると思う。ダンス・フロアのような何もない部屋で
数人の男女がエクササイズのように規則的に体を動かしていると、時々不意
に斜めの状態でコマが止まる。それに側転を延々と繰り返す人型のシルエット
が挿入されていた。

米43位、シングルは1枚だけ出た。
Stereotomy (米82位)

Gaudi
Arista 32RD-89 (JP)
1987

邦題は「ガウディ」。言わずと知れたあの天才建築家アントニオ・ガウディの
ことである。彼の設計で現在も建築中、完成までにはあと100年以上かかると
言われている 「聖家族教会」 を歌った曲もある。ヴォーカリストは John Miles、
Lenny Zakatek、 Eric Woolfson、 Chris Rainbow、Geoff Barradale。この後
ベスト盤が2枚出るが、これがAPP名義としては最後のオリジナル作品である。
パイロットのメンバーではイアンだけが最後まで残った。そして、ミュージカル
の世界へ進んだウルフソンと別れて、パーソンズはソロとしてライヴを含む
積極的な活動を展開していくのだが、その傍らには今も常にイアンとスチュア
ート・エリオットの姿がある。

Standing On Higher Ground に関してはプロモ・ビデオが確認されている。
スタジオで独りフィルムの編集をしている青年がふと気づくと、画面の中の
摩天楼の天辺に自分がいる。慌てて目を凝らすと、画面の景色の中に吸い
込まれている。次は熱気球に乗っているし、最後には雪の尾根に立っている、
というものだった。

デイヴィッドが不参加なのは、「ガウディ」の録音より一足早くエルトン・ジョン
からワールド・ツアーへの参加要請があったため。

英66位、米57位。シングルは2枚出ている。
Standing On Higher Ground
La Sagrada Familia


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