その3

2002年11月 KAISERSLAUTERN カイザースラウテルン(2)

彼は私たちが子連れだったせいもあるのだろうが、帰り道のことや宿のことも
心配してくれた。我が家がここから200マイル(320q)以上離れていることを話すと
少し驚いていたようだったが、「今夜はこの街のホテルに泊まる」と話すと安心した
表情を見せた。彼は時折PETボトルのキャップをあけては、水をのどに流し込んだ。

それから、彼の勧めで一緒に写真を撮ったあと、私は持ってきた8枚のCD(PILOT5枚
〔BEST含む〕、KEATS1枚、SOLO2枚)すべてにサインをもらった。彼が私の名前を
訊いてきたので、私は運転免許証を見せながら、名前を告げるとともに「明日11月10日は
私の誕生日です。日本時間で既に私は誕生日を迎えました」と生年月日の欄を
指差しながら言った。「誕生日おめでとう」といいながら、彼はすべてのCDに私の名前も
書き入れてくれた。たいへんうれしかった。ちょっと枚数が多くて申し訳なかったが、
彼は「おや、全部持ってるんだねぇ」といいながら、床にひざをつきながら
一枚一枚丁寧にサインをしてくれた。(A.P.P.もCAMELもFISHも持ってるぞと
言おうと思ったが、切りがないので言わなかった)







(写真)
デイヴィッド直筆サイン入りの
Second Flight。背景は現在の
Air Studio。







途中でドイツ人の観客がサインをねだりにくる。DAVIDがチケットの裏にサインをしたあと、
客はドイツ語で何か言っている。どうやらDONNIEのサインが欲しいらしい。私はDAVIDに
「通訳してくれないか」と言われて、しどろもどろになってしまった。しかし実際のところ、
彼はちゃんとわかっていたらしい。「5分後に・・・」とドイツ語で答えていた。
「ドイツ語も上手に話せるんですね」とドイツ語で私。「少しだけね」とDAVIDはドイツ語で答えた。

それから、ミュージシャンとしての彼にふさわしい質問をしようと思って、楽器のことを
訊いてみた。この夜、彼はいつものMUSICMANではなく、FENDERのJAZZ BASSタイプの
5弦ベースを弾いていたのだ。
「新しいベースを弾いていたようですが?」
「あれはドイツでレンタルしたものなんだ。・・・とっても重くてね、腰が痛いよ!」と彼は
腰をさする仕草をした。なるほど、レンタルだったか。しかし「弘法、筆を選ばず」というが、
熟練のミュージシャンは楽器を選ばないのか。聴いているぶんにはまったくわからなかった。
「DONNIEの歌について、どう思う?」と彼が尋ねたので、
「ええ、もちろん気にいってますよ」と答えた。
でも正直なところ、私はDAVIDがリードシンガーであって欲しいと思っている。
「あなたはフロントマンであるべきだ」と言いたかったが、DONNIEの音楽を否定してしまうような
気がしたので、その言葉は胸の奥にしまっておいた。

そして、私はとっておきの話題を切り出した。
「先月の末に、スコットランドに行ったんですよ。もちろんエディンバラにもね」


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