来日公演レポート Alan Parsons and the Band in Japan

Tour members

Alan Parsons (vo.kb.&a.g.)
Ian Bairnson (e.g.&sax)
Stuart Elliott (Dr.)
Neil Lockwood (vo.)
John Beck (vo.&kb.)
Dick Nolan (b.g.)

前回(97年)の来日とは多少の違いが見られます。御大及び当初から屋台骨を支えてきたIanとStuart Elliotは
不動のメンバーですが、それにJohn Beck(ex. It Bites)とNeilLockwood(ex.ELOpart2)が前回と同じ顔ぶれです。
ベーシストがはJohn Giblinに代わってDick Nolan(ex. It Bites)になり、ツイン・ヴォーカルだった前回と異なり、
今回はPeter Beckettが外れています。


12月14日 東京・中野サンプラザ


何たるドジ!セット・リストのメモをなくしてしまいました。15・16両日と2曲だけ違っていたはずです。
どなたか、御記憶の方はいらっしゃいませんか?ご連絡お待ちしております


セット・リストがないので詳しい解説がまだ出来ないのですが、初日のこの日一番印象的だったのは、
グッズ売り場が異様な盛り上がりを見せていた事でした。商品はTシャツとポスターのみ、という潔さ(?)
に「じゃあ、帰りにTシャツ買おう。帰りでいいや、それで十分」と思った私は甘かった。公演終了後には
イナゴの大群が通り過ぎた田んぼのごとく、何一つ残っていなかったのでした。3公演とも皆勤する気で
いたので、「じゃあ明日があるさ、最悪、大阪がある」と思った私はもっと甘かった。グッズはこの日でなんと
全部売り切れていたのでした。もっと用意しておかんかいっ!後で聞いたのですが、Tシャツの最後の1枚
を買ったのは私の友人でして、壮絶な争奪戦が繰り広げられたということでした。手ぶらで帰った私は、
子守兼お留守番のオヤマさんにあからさまに落胆されたのでした。楽しみにしてたんだって。「大丈夫、
きっと Avenueで買えるから」となだめましたが、さすがはThe Avenue、買えました!会場で買い損ねた方、
過去のTシャツやマグ・カップ、時計など他にもいろいろありますのでご安心下さい。購入方法等で不安や
質問がある方は相談に乗ります。この日の観客の入りは悪かったです、はっきり言って。一階席が1/3くらい
空いていたし、2階なんてがらがら。翌日に不安を残しつつ、続きます。


12月15日 東京・中野サンプラザ


SET LIST
  
  1.H.G.FORCE
  2.CAN'T TAKE IT WITH YOU
  3.BREAK DOWN
  4.RAVEN
  5.WHAT'S GOES UP
  6.LUCIFER
  7.PSYCHOBABBLE
  8.OUT OF THE BLUE
  9.PRIME TIME
 10.I WOULDN'T WANNA BE LIKE YOU
 11.STEREOTOMY
 12.I CAN'T LOOK DOWN
 13.BLOWN BY THE WIND
 14.OLD AND WISE
 15.PRESS REWIND
 16.THE VERY LAST TIME
 17.THE SYSTEM OF DR.TARR AND PROF.FEATHER
 18.DON'T ANSWER ME
 19.STANDING ON HIGHER GROUND
 (Encore) 
 20.EYE IN THE SKY
 21.GAMES PEOPLE PLAY


お客の入りは昨日並み、遠路はるばる東の果てまで来てくれたのに。理由は二つ考えられた。一つには年末の
繁忙期に当たっていた事。APのファン層は今や最も忙しい30代40代が中心だ、この時期の予定は早めに入れて
おかねば身動きが取れない。来日の噂こそ夏頃から囁かれていたものの、決定の報が流れた頃には公演まで
2ヵ月だった。もう一つは、事前の宣伝が今一つ足りなかったのではないかという事。後で聞いたら、「全然知らな
かった!知ってたら絶対行ったのに!!」という人たちも結構いたからだ、うーん……。

結論から言えば、3日間中(すみません、ワタシ、ダンナと子供らほっぽらかして皆勤しました)最高の出来だった
のがこの日だったと思う。昨日と2曲だけ曲目が入れ替わっていた。昨日もイアンはステージで何度か鼻をかんで
いた。風邪かな?と心配していたのだが、後で聞いたら時差のせいもあって風邪を引いたんだそうだ。この日は
昨日よりは楽そうに見えたのだが、翌日の大阪ではまた熱があるようだった。回復までには帰国後もしばらく
かかったとかで、大変だったらしい。でも、演奏はそれを感じさせない素晴らしいものだった。

オープニングの Dr.Evil はちょっと分かりにくいよなぁ、私だって「オースティン・パワーズ」見てないしと思いつつ、
気がつくといつものAPPワールドだった。安心して聴ける、ということは反面、意地の悪い見方をすればマンネリ
なんだろうか。でも、そこがプロフェッショナル集団たる彼らの腕の見せ所。私は「悪口言いたい奴は前へ出ろ!」
と言いたい。

今回私はニール・ロックウッドを大いに見直してしまった。前回はツイン・ヴォーカルということもあって、気づかな
かったのだけれど、今回は彼一人でゆうに5人分の働きをしたと思う。詳しくはまさみさんが大阪公演の項で書いて
くれているので省くけれど、決定版とも言えるコリン・ブランストーンの名唱のあるOld And Wise(コリンはこの曲を
後に再録音して自分のベスト盤にも入れているし、シングル・カットもされている。)に挑戦し、コリンの歌の
雰囲気を壊すことなく、なおかつ自分自身の声で見事に歌いきり、大のコリン・ファンでもある私を唸らせたの
だった。ただ器用に歌っただけの前回とは大違いだ。ジョン・ベックは前回も「上手い人だなぁ」、と感心したが、
今回も来てくれて嬉しかった。ベースの元同僚・ディック・ノーランも実によかったので、今度 It Bitesを聴いて
みようと思う。スチュアート・エリオットは「職人」という言葉を感じさせる。見事な白髪(だったよ、まさみさん)を
短く刈り込んでいたのが印象的だった。そして意外なほど後ろに引いている御大アラン・パーソンズも
相変わらずで、口の悪い友人は「オブジェのようだ」なんて言っていたが(勿論、一発蹴りを入れておいた)、
彼の統率力と全体を見渡す目があらばこそのアラン・パーソンズ・バンドなのだということを忘れてはいけない。
典型例がパイロットの音作りにあるではないか。ロイ・トーマス・ベイカーのプロデュースした「モーリン・ハイツ」
だけが4枚の中で異色な存在である事に異論を唱える人はいないだろう(但し、私が「モーリン・ハイツ」を
評価しないという意味ではない、念の為。あれはあれで好きであります)。2メートルの巨漢でありながら
控えめにたたずむアラン・パーソンズの偉大さを改めて思った。

で、この後、イアンに皆さんのメッセージをお渡ししました。面会者の数や雑誌「ストレンジ・デイズ」の取材
申し込みに、日本にこんなに多くのパイロット・ファンがいるということに驚いている様でしたよ。彼は175センチ
くらい(前回くっついてきたダンナと並んだところ、178センチのダンナよりちょっとだけ小さかった)とあまり大柄
ではないのですが、前回の来日時に比べて明らかにちょっと体重が増えた様子。幸せぶとり、というヤツですね。
なんたって5月に結婚したばかりの奥様・レイラさんは超美人のモデル、しかも女性が世界一美しい人種と言われる
ブラジル人ですからね。おまけに人柄まで素敵という事なので、もうこれは肥るしかない?「世界一お似合いの
カップル」と言われています。末永く、お幸せに。

時間が経ってしまったので、あまりコンサート・レポートになっていないかもしれませんが、その分まさみさんが
素晴らしいものを書いてくれましたので、ご勘弁下さい。また2年後くらいに来てくれる事を願って、次のアルバム
を楽しみにしましょう。


12月16日 ZEPP大阪


SET LIST : 15日と同じです。
特別寄稿・ まさみさんの99.12.16 ALAN PARSONS 大阪公演レポート
Masami's Concert Review

アラン・パーソンズ大阪公演レポート   瀬古 正美

 大阪公演には一人で行くはずだった。ところがお世話下さる方があって、最前列の
チケットが二枚手にはいる、というので、急遽戸村さんの来阪決定。いやがうえにも
盛り上がることとなった。

 開演前、ミナミをうろうろしていた二人は「やっぱり花束は最前列のつとめよね」
と、大丸心斎橋店に飛び込み、それぞれに小さな花束をあつらえた。「東京では二日
ともカメラチェック、なかったよ。一日目は花束を渡した人がひとり、二日目もプレ
ゼントを渡した人がひとりかふたりで、そんなに騒ぎにもならなかったし」と戸村さ
ん。ふむふむ、なるほど。
 ところが、である。Zepp Osakaの警備は厳しかった。「花束はご自分用とは存じま
すが、預からせていただきます」と、丁重な物腰で、あれよというまに取り上げられ
てしまった。見ると、カメラやMDなんかもどっさり「預か」られている。大阪の方が
厳しいなんて、ちょっと意外。
 会場はこぢんまりしていて、これでお客が少なかったら目立つかも、とちょっとド
キドキした。座席の埋まり具合を心配しつつ(一階席はとりあえず埋まりそうな感じ
だった)、チケットの番号に従って自分の席についてみて、驚いた。ど真ん中だった
のだ。もともとスタンディング用の会場に椅子を設置してあるので、ステージと座席
の間にほとんど段差が感じられない。たとえて言うなら、学校の体育館でステージ
の1メートル前に並べられた椅子。手が届きそうだ。
 まだ暗い舞台に楽器だけが並んでいる。「ねぇねぇ、イアンの場所はあそこ?」左
手の離れた場所を指さして戸村さんに訊いてみた。「そこだよ」彼女がさしたのは私
の真ん前に置かれているギター。ひえぇ〜、ここなの? 近すぎるよぉ。

 うろたえる私にはお構いなしに、ほぼ定刻、ステージは始まった。'The Time
Machine' Tour にふさわしく、H.G.FORCEでスタート。。アラン・パーソンズのMCの
あと、すぐさま、CAN'T TAKE IT WITH YOU、 BREAK DOWN、WHAT'S GOES UP、LUCIFER
、とおなじみの曲がほとんどぶっ続けで演奏され、会場は大喜び。続くPSYCHOBABBLE
ではイアンの変わったギター・プレイが見られたが、私は「これってギズモ(も
と10ccのゴドレー&クリームが開発した楽器)みたいだなぁ」と余計なことが頭に浮
かんできて、一瞬我に返ってしまった。それまでは、フロント・マンにしては影の薄
いアラン・パーソンズはもちろんのこと、常に舞台の前に出てノリまくっていたヴォ
ーカルのニール・ロックウッドも眼中になく、ひたすらイアンの指を見ていたのだ。
(時々はお顔も見たけれど、恥ずかしかった。)
 で、改めて他のメンバーを見てみると、なかなか楽しい。アラン・パーソンズは相
変わらず山のような大男で、ぼそぼそとした声でしゃべっている。ドラムのおなじみ
スチュアート・エリオットは、はじめ誰だかわからなかった。金髪だったからだ。お
しゃれで染めたのかな? でも、もしかするとただの白髪だったかもしれない。ベー
スのディック・ノーランはストイックな雰囲気がなかなかよろしい。キーボードのジ
ョン・ベックはコンサートの間中、ずーっと、座っている丸椅子の高さが気になって
仕方ないみたいだった。暇があるとくるくる回して高さを調節し、スタッフを呼んで
椅子の下に台を置かせたりした。メンバー紹介の時もしゃがみ込んで椅子をいじって
いたので、アラン・パーソンズに 「隠れちゃってるよ」と言われていた。いったい
何を気にしていたんでしょうね。
 そして、特筆すべきは、やはり、ヴォーカルのニール・ロックウッドだろう。あれ
だけ多種多様のヴォーカリストを擁する歴代プロジェクトのヒット曲を、ひとりで歌
ってなんの違和感も感じさせなかったのだ。OUT OF THE BLUE、PRIME TIME、 I
WOULDN'T WANNA BE LIKE YOU、STEREOTOMYといった曲と、もともと本人の歌うI
CAN'T LOOK DOWNにほとんど差がないように思えたし、THE VERY LAST TIMEなどはア
ルバムでもこの人がヴォーカルだったかしらと思ったくらい。驚いたのはOLD AND
WISEで、私にはコリン・ブランストーン本人が歌っているように聞こえちゃったので
ある。(ファンのみなさん、ごめんなさい。)THE SYSTEM OF DR.TARR AND
PROF.FEATHERはちゃんとジョン・マイルズに聞こえたし、GAMES PEOPLE PLAYはもろ
、レニー・ザカテクだった。EYE IN THE SKYも大健闘。いや〜、器用な人です。(た
だし、 BLOWN BY THE WINDはエリック・スチュアートには聞こえなかった。「はなか
ら似せようと言う気はなかったみたいだよ」とは戸村さん。唯一違和感があったの
はWHAT'S GOES UP。デヴィッドが歌うのを聴きたいのだよ、これは)
 さて、もちろん、われらがイアンは別格であります。どんなに参加メンバーがかわ
っても音に一貫性があるのは、彼のギターがあればこそ。艶やかに、それでいて出し
ゃばりすぎることなく、要所要所をしめる演奏を聴かせてくれる。 I CAN'T LOOK
DOWNの途中で彼のギターがうんともすんともいわなくなったとき、本当にどうなるこ
とかとはらはらした。ニール・ロックウッドもなんだか歌いにくそうだった。(それ
なのに、アラン・パーソンズときたら、「5分後に会いましょう」とかなんとか言っ
て、自分はさっさと舞台の袖にひっこんでしまうんだもの。薄情者ぉ〜。)でも、困
っているイアンの顔もなかなかよかったし、音が出たときのうれしそうな顔ったらな
かった。
 OLD AND WISEでイアンが見せたサックスの腕前もなかなかのものだった。97年の来
日公演の時も彼はサックスを披露したが、そのときはまだまだ「隠し芸」という感じ
だった。しかし、今度は違った。彼のギターが「歌う」のと同じように、ちゃんとサ
ックスが「歌って」いた。
 こんなイアンを、アラン・パーソンズは「ずっと昔から……パイロット、そうだ、
パイロットにいたんだ(ひときわ高い拍手)、一番最初の「幻想と怪奇の物語」以来
、ずっと一緒にやってきた、今では有名なソングライターでもある、イアン・バイア
ンソン!」と紹介した。(このとき一声、「イアン!」と叫んだのは、恥ずかしながら
この私です。)
 戸村さんによると、アラン・パーソンズが「パイロット」に言及したのは、この日
が初めてだったそうだ。この三日ほどで、日本でのパイロット人気が根強いことに改
めて気づいたらしい。そしたら、今度(はあるのか?)は、デヴィッドをベーシスト
として連れてこようね、アランさん!(でも、そうなったら、観客席はAPのファンと
はちょっと違うんじゃないか、というヒトばっかりになって、アラン・パーソンズに
は気の毒かも)
 アラン・パーソンズがステージの終わりを告げる挨拶を始めたとき、観客が次々に
立ち上がった。これはファンとして当然の礼儀だと思う。別に何をしようというわけ
でもない。ところが「屈強な警備員」たちは、無粋にもステージ前にスクラムを組ん
で立ちはだかった。顔は緊張でこわばっている。
 何もしないって〜。アラン・パーソンズだよ。ファンだって、みんな分別盛りじゃ
ないの。花束だって取り上げられちゃってるんだし。ほらほら、メンバーがみんな手
持ちぶさたで困っているじゃないの。ここであの花束を渡したら、ちょうどきりよく
終われるところだったのに。
 というわけでいささか不満の残るエンディングだったが、みなさん気持ちよく退場
し、観客も気持ちよくアンコール。最後はEYE IN THE SKY、GAMES PEOPLE PLAYとい
ったおなじみの曲で盛り上がって、本当に楽しいコンサートだった。

 あ、そうだ、最後にイアンに一言。合掌してお辞儀するのはやめてよね。日本にそ
んな風習はありません。誰だ、あんなことイアンに教えたのは。   (おしまい)



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